学名:Cerasus speciosa
クマリン香について
クマリンの香りは日本人にとってはザ・桜餅。桜の葉を塩漬け/乾燥する過程で生じる香り成分がクマリンです。
桜葉の他、クマリンを多く含む代表的なスパイスは中南米原産のトンカ豆(クマルビーンズ)です。そもそもクマリンはこの植物に因んで命名されました。
他にはポーランドのリキュール“ズブロッカ”に漬け込まれるバイソングラスや、ドイツのサワービール“ベルリナーヴァイス”に添加して飲む緑のシロップの原料“クルバマソウ”にもクマリンが含まれます。
香りのする桜は珍しい
では、街中に咲いているソメイヨシノの葉を塩漬けにすればクマリン香は出てくるのかというと、そうではありません。成分としてのクマリンが発生しないわけではないのですが、人間の嗅覚で検知できるほどの濃度に満たないのです。
日本の桜は数百種類と言われますが、これらのルーツは基本となる野生種11種類です。この11種の中で特に強い香りを有するのはオオシマザクラ。桜餅に使用されるのはまさにオオシマザクラの葉です。次いでヤマザクラにも香りがありますが、その他の種はほとんど香りがありません。
そしてオオシマザクラとヤマザクラの系統の交配種でも香りがするとは限りません。事実、ソメイヨシノの片方の親はオオシマザクラであることが判明していますが、残念ながら香りはほぼありません。
桜は意外と香りのしない花なのです。
オオシマザクラを使用したJOUFUKUの作品
Fougère 桜
クマリン香の裏に隠された春のニュアンス
『Fougère 桜』で使用した桜の葉はオオシマザクラの葉です。やはりクマリン香がしっかり感じられますが、フゼア調を構築する上で重要な “パウダリーな甘さ”の点ではトンカ豆には劣ります。よって本作ではトンカ豆も併用しています。
しかしながら、オオシマザクラの葉からはトンカ豆にはないフローラル/グリーンノートも感じられ、これはまさに“春”のニュアンスです。この春のニュアンスを強調すべく、本作では同じくクマリン系の香りを持つ花のハーブ(リンデンフラワー、メドウスイートなど)もブレンドしました。
たくさんのハーブを使用したビールですが、トータルで春や桜を楽しむお供にして欲しいビールです。