キンモクセイ – Osmanthus

学名 : Osmanthus fragrans var.aurantiacus
分類 : モクセイ科モクセイ属

キンモクセイの仲間と呼び名

キンモクセイ(金木犀)はモクセイ科モクセイ属の常緑小高木です。
ご存知、秋を象徴する香り高いオレンジ色の花を咲かせ、日本の四季それぞれを象徴する4大香木のひとつに数えられます。
(ちなみに4大香木は、春-ジンチョウゲ、夏-クチナシ、秋-キンモクセイ、冬-ロウバイです。)

キンモクセイの仲間には、白っぽい花を咲かせるギンモクセイ(銀木犀)や、淡黄色の花を咲かせるウスギモクセイ(薄黄木犀)があり、いずれも香りを放ちます。
単純に“モクセイ”といった場合、分類上はキンモクセイではなくギンモクセイのことを基準として指し、キンモクセイやウスギモクセイはそのバリエーションということになります。
(木犀という漢字は、樹皮が動物のサイ(犀)の足に似ていることから。)

学名はそれぞれ
ギンモクセイ:Osmanthus fragrans
キンモクセイ:Osmanthus fragrans var. aurantiacus
ウスギモクセイ:Osmanthus fragrans var. thunbergii

osamanthusはラテン語のosm(匂い)とanthos(花)から成り、fragransも香りの意味、aurantiacusはオレンジ色の意味、thunbergiiはスウェーデンの植物学者の名前が由来です。

英語ではこれらはいずれも“fragrant olive”でまとめられます。または“osmanthus”でも通じます。ただし、キンモクセイのことを特に“fragrant orange colored olive”または“orange osmanthus”と言うこともあり、一応区別はしているようです。
香りの業界ではosmanthusというと自動的にキンモクセイのことを指します。分類学上の代表がギンモクセイであることとのギャップが見て取れます。

原産地である中国での呼び名はそれぞれ
ギンモクセイ:銀桂
キンモクセイ:丹桂
ウスギモクセイ:金桂

であり、これらはまとめて“桂花”と呼ばれます。

ややこしいことに中国では“桂”はモクセイのグループを指すだけでなく、クスノキ科のニッケイ(肉桂)全般のことも指します。肉桂はざっくりいうとシナモンのことです(詳しくはこちら)。
さらにややこしいことに、日本で“桂”が何を指すかというと、モクセイ科でもクスノキ科でもなく、カツラ科カツラ属のカツラのことを指します。
文脈によっては“桂”は月桂樹のことを指す場合もあるし、月桂樹にしたってシナモンリーフとよく混同されるし、、、。

うん、ややこい。また機会があればまとめます。

キンモクセイの香り

どこまでも届くような真っすぐな香りの中に、トロっとした甘さのあるキンモクセイ。
この香りを構成するのは、βイオノン、リナロール、γ-デカラクトンといった成分です。

βイオノンとリナロールはそれぞれスミレとラベンダーの香りを構成する成分でもあり、キンモクセイの拡散性ある強い香りはこれらの寄与が大きいと思われます。

一方でγ-デカラクトンはキンモクセイの独特な甘い香りに寄与しています。

γ-デカラクトンは、桃やココナッツに含まれる脂っこさのあるフルーティな香りです。γ-デカラクトンは植物だけではなく牛脂にも含まれ、和牛のコクを形成する重要な要素です。また変な話ですが、10~20代の若い女性からもγ-デカラクトンが放出されているらしいです。この話を深堀りしたいのですが、、、自重します。

また、γ-デカラクトンはウイスキーのもろみ製造工程でも生成します。それはビール酵母とウイスキー酵母、乳酸菌という異なる微生物同士の共同作業の結果であり、酒造業界の人間からするととても面白い話なのですが、こちらも今回は割愛します。

キンモクセイ

和牛
若い女性
ウイスキー

繋がってきたでしょうか?

キンモクセイを使用したJOUFUKUの作品

天香桂花

天香桂花はキンモクセイと八角、烏龍茶などを麦汁に加えて発酵させ、東洋的な秋の美を表現したビールです。

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