学名:Cymbopogon citratus
別名:コウスイガヤ、チューマナ・プールー
分類:イネ科キンボポゴン属
レモングラスについて諸々
レモングラスはタイ料理のトムヤムクンでお馴染みのハーブですね。その名の通りレモンのような香りが特徴で、なんならレモンよりもレモンらしいとも言われます。
原産国はインドで、“チューマナ・プールー(赤い茎)”の名で親しまれています。数千年の歴史を持つ医学体系“アーユルヴェーダ”にも登場するそうです。
分類はイネ科キンボポゴン属です。“キンボポゴン(Cymbopogon)”が面白い響きで気に入ってしまい/ましたが、cymbeは“舟”をpogonは“髭”を意味し、同属植物の実の独特な形状に由来します。
イネ科の植物は香りが豊か
イネと言えば日本人にとっては米のイメージが強いですが、実はイネ科には面白い香りのハーブが沢山あります。
例えばバイソングラス。これはポーランドのリキュール“ズブロッカ”に使用され、桜餅のような香り成分“クマリン”に富みます。
その他にはベチバーもイネ科です。ベチバーは香水のベースノート(最後まで揮発せずに残る骨格の香り)に重宝されるハーブです。湿った土の香りとよく表現されますが、個人的にはどこか透明感と線の細さも感じる香りで、ベチバー単体でも永遠に匂っていられます。
ビールファン注目の香り成分 “ゲラン酸”
レモングラスの香り成分といえばリモネンやシトロネラールなど、レモンにも含まれる成分がまず挙げられますが、ビールファンにとって注目に値するのが“ゲラン酸”という成分です。
ゲラン酸は北海道で開発・生育されたホップ品種“ソラチエース”に特異的に含まれ、他のホップ品種には見られない成分です。ゲラン酸は微かにウッディな香りがしますが、それ単体では極めて香りが弱いそうです。しかし、これがリナロールやゲラニオールといった花のような香り成分とともに存在するとき、たちまちレモンのような強い香気を放つのだとか。
レモングラスとソラチエースはともにゲラン酸の他にリナロールとゲラニオールを含みます。このようにシングルハーブでもゲラン酸のポテンシャルが存分に活かされる場合もありますが、より華やかな香りの花のハーブやホップ品種をレモングラスと合わせてみるのも面白そうです。
、、、と思っていたら最近、ソラチエースを多用する某ビール会社がレモングラスとシトラホップを使ったプレミアムビールの販売を開始しました。背景を知っているとまた違った美味しさ・面白さがあります。
合法覚醒剤?
レモン系の香りを持つハーブは総じて消化不良や食欲不振の改善に利用されますが、レモングラスはこと食欲を掻き立てます。これは個人的に、レモングラスにはアルカロイド類が多く含まれるからかなあと想像しています。アルカロイドは動物に対して様々な生理活性を与える物質です。アルカロイドの中には穏やかな覚醒作用を有するものもあり、例としてコーヒーのカフェイン、タバコのニコチンなどが挙げられます。
食欲を増進するには、当たり前ですがお腹を減らすこと、つまりエネルギーを消費することが大事です。古今東西で人間は、身体に蓄えられたエネルギーを開放するために、植物の持つ穏やかな覚醒作用を利用してきました。レモングラスに含まれるアルカロイドにもそのような効果があるのかもしれません。