
学名: Pimpinella anisum
別名:アニス、西洋茴香
分類:セリ科ミツバグサ属
アニスシードを主に飲食物など嗜好品の観点から紹介します。
概要
アニスシード(Pimpinella anisum)はセリ科ミツバグサ属の一年生草本です。
別名はアニス、西洋茴香(セイヨウウイキョウ)、茴芹(ウイキン)など。
学名のanisumはギリシャ語の「ánēthon」に遡り、元々は近縁種のディル(Anethum graveolens)を指していました。また、和名で「茴香」と名の付くハーブ・スパイスにはフェンネルを始めとして多くのものがあります。
アニスは古今東西で様々なハーブ・スパイスと比較・混同されてきたことがうかがい知れます
アニスシードの利用部位は主に種子ですが、一応は他の部位も食べられます。葉や茎はサラダに、根は煮込みにするそうですが、あまり一般的ではありません。
原産地は東地中海地域と南西アジア、特にエジプトや中東。温暖な気候を好むため、現在はスペイン、トルコ、エジプト、メキシコ、チリなどで大規模に栽培されています。家庭菜園でも育てやすく、種まきから収穫まで数ヶ月で楽しめます。
アニスシードの香り・味わい
アニスシードの香りは、スーッと鼻腔を抜ける清涼感がありながら、同時に温かみのある甘いスパイシーさも持ち合わせているのが特徴です。
具体的なものに例えると、歯磨き剤の香りです。昔の人は擦り潰したアニスシードで歯磨きをしていました。現在の歯磨き剤にもアニス香料が添加されることがあります。
また、後述の通りアブサンなどのお酒の原料として利用されるので、蒸留酒ファンの方には馴染深い香りかもしれません。
噛んだときの味わいは甘みが強く、少しピリッとした刺激が加わります。
主な香りの成分はアネトールで、精油の75-95%を構成します。これが甘い香りの核心です。他にエストラゴールやp-アニスアルデヒドなどもアニスらしい香りに寄与します。その他にはピネン(樹脂香)や、リモネン(柑橘香)などが含まれます。
アニスシードと比較されるハーブ・スパイス
フェンネルなどの近縁種

近縁種にはフェンネル(Foeniculum vulgare)、ディル(Anethum graveolens)、クミン(Cuminum cyminum)、キャラウェイ(Carum carvi)などが挙げられます。
いずれもセリ科で、これらの種子はアニスと見た目と香りが似ています。
中でもフェンネルは、アネトール香が支配的で、本当にアニスとよく似ています。
違う点としてはアニスが「甘味」を特徴とする一方、フェンネルは樹脂っぽさのある香りと、噛んだ時の「塩味」を連想するミネラル感が特徴かと思います。
スターアニス

アニスと名前と香りがよく似ているのがスターアニス(Illicium verum)です。
八角とも呼ばれるスターアニスはマツブサ科シキミ属で、利用部位は果実です。
植物的には全くの別物ですが、スターアニスもまたアネトール香が支配的でアニスと香りが良く似ていることから、その代替えとして名付けられました。
アニスシードとスターアニスの香りの違いについては、アニスシードの方がアネトールの香りが繊細で上品で、ミルキーな甘さと、セリ科特有の爽やかさのバランスが良いと感じます。
一方、スターアニスはアネトールをよりダイナミックに感じ、ともすれば雑味ともとれるフルーティさ、スパイシーさがあります。味わいもスターアニスの方が「旨味」や「酸味」が強く、煮込み料理などにはスターアニスが適しているかもしれません。この旨味や酸味のニュアンスは、クローブなどのスパイスからも感じられることから、香り成分のオイゲノールが関与しているのかもしれません。
リコリス

アニスとよくセットで名を連ねるハーブとしてリコリス(Glycyrrhiza glabra)が挙げられます。
リコリスはマメ科カンゾウ属で、利用部位は根です。こちらも植物的には別物です。アニスと香りが似ていると言われますが、個人的にはそこまで似ていると思いません。
リコリスにもアネトールが含まれるようですが、その香りは支配的でなく、どちらかというと根っこ特有の土の香りの方が前面に感じられます。
砂糖を焼焦がしたような甘いニュアンスはアニスと共通かもしれません。
口に含んだ時の甘味はリコリスの方が圧倒的に強く感じます。これはリコリスのグリチルリチンという成分によるもので、アネトールとはまた別の成分です。
このように、アニスとリコリスには、香り・味わいが似ている点もあれば、似ていない点もあるという感じですが、両者はとにかく相性が良く、セットで用いられることがしばしばです。特にリコリスキャンディにはほぼ必ずといっていいほどアニスも用いられます。
両者を別々に匂ったことのない人からすると、リコリスとアニスが同じ香り、さらに言えば同じハーブと考えてしまっても不思議ではありません。
アニスシードの利用
古今東西の利用

アニスシードの歴史は古く、古代エジプトでは既にミイラの防腐に使われていた記録があります。
中世以降では、ヨーロッパや地中海沿岸諸国を中心に、お酒によく用いられました。
ビザンツ帝国では、アニス風味のワインが飲まれていました。
近代ではスイスのアブサン、フランスのパスティス、イタリアのサンブーカ、ギリシャのウゾ、トルコのラキなど。これらはアニスシードを蒸留または浸漬して作られ、水を加えると白く濁るのが特徴です。
ビールではベルギーのクリスマスエールにリコリスとセットで用いられることがあります。
こちらは熱麦汁での抽出が基本となります。
お酒以外の利用では、ローマ時代に消化を助けるアニスクッキーとして食されていました。これがアニスケーキへ発展し、さらにウェディングケーキの原型となったともいわれます(飽くまで俗説ですが)。
家庭での利用
家庭でアニスシードを使用するなら、料理よりスイーツがおすすめです。
砕いて使うと良いですが、そのままでもさほど口当たりは悪くありません。種子を軽くトーストすると香りが一層際立ちます。
アニスと小麦粉、砂糖、卵、バターを混ぜて焼いて、クッキーにするか、イタリア風のビスコッティにするのが定番です。コーヒーやワインに浸して食べるのが最高です。
バターとミルクを増量すればアニスケーキになります。ここにドライフルーツをトッピングしても美味しいです。ラムレーズンを使用すれば完全にお酒のお供になります。
料理ではパンや煮込みに少量加えるとアクセントになりますが、フェンネルの方が相性は良いかもしれません。
利用上の注意
エストロゲン様作用があるため、妊娠中の大量摂取は避けるようにしてください。
アニスシードに関連するJOUFUKUの作品
ビール(発泡酒)
『Louche(ルーシュ)』

アニスリキュールとフルーツのカクテルからインスパイアされたビールです。ルーシュとはアニスリキュールに水を加えた際の白濁現象のことを指します。
また、本作は同じアニスを使ったお酒でもアブサンや他のアニスリキュールと違って、「熱抽出→発酵」というプロセスを経ていることが面白いところで、これによりアニスの甘味よりも爽やかさが際立つ気がして、ビールらしい飲み口が魅力だと思います。
インフュージョン(ハーブティー)
『Beerish Infusion <Stout>』

黒ビールのスタウトの香り・味わいを表現したハーブティーです。スタウトの香ばしさを伴うシャープな発酵香をアニスの香りで表現しました。
その他ノンアルコール
『JOUFUKU Flower Cola』
エルダーフラワーやハイビスカスなどの花を使用した醸馥オリジナルレシピのコーラです。
コーラらしいスパイス感と、花の甘酸っぱい香りをアニス(厳密にはスターアニス)で表現しています。
CRAFT BEER BASE leaf(グラングリーン大阪北館2F) 店内にてご注文していただけます。

